1年ろ組の、初島孫次郎、鶴町伏木蔵、下坂部平太、二ノ坪怪士丸の名前の由来となっている能面。
〇孫次郎(まごじろう)

金剛流の代表的な女面。
名前は、室町時代、金剛右京久次(孫次郎)が、若くして亡くなった妻の面影を偲んで打ったという伝承から。 眼は浅い二重瞼で、毛描きは額中央からの2本に、途中こめかみからの2本が加わり、計4本で頬に流れる。
〇節木増(ふしきぞう)
節のある用材で作られた増女(ぞうおんな)の面で、宝生流の本面。
鼻筋の左の付け根の辺りに節があり、ヤニが滲み出てシミになった。これがまた1つの景色として風情があるということで、塗りなおさずに「節木増」の名称で呼ばれるようになった。
後に、この面にならって同じ個所にシミを作った写しが制作された。
〇平太(へいた)
血気盛んな歴戦の武将の面で、青年をあらわす能面の代表格。
名前は鎌倉時代の武将、荏柄(えがら)平太胤長の顔を写したとも、「箙(えびら)」の梶尾平三景時(かじわらへいぞうかげとき)、源太景季(げんたかげすえ)親子の名に由来するとも言われている。
日に焼けた肌と、太くはね上がった眉先、精悍な髭を持ち、眼を見開いた姿で描かれる。
〇怪士(あやかし)
罔像(罔:水中の溺鬼)、霊神とも書かれる。
海に現れる妖怪や、武将の亡霊、霊的な神などに使用される面。
沈んだ肌の色と痩せた頬を持ち、歯には鉄漿(おはぐろ)、眼には金泥(きんでい/金粉をにかわで溶いた顔料)が施される。
*増女 : 田楽の名人、増阿弥によって創作された面。成熟した女性の面で、天女など神性の強い役に使用される。毛描きは、額中央から横へ二本、こめかみに三本、こめかみから頬へ三本の三段に引かれる。
*本面 : オリジナルの面。室町~安土桃山時代頃に創作されたものがほとんど。
*写し : 本面を基に作られた模倣面。
*箙 : 源平の戦いで、梶原景季が梅の枝を箙(合戦の際、矢を入れて腰や肩から下げた容器)に差して戦ったという古事に基づく、世阿弥作の謡曲。