「制札 こちらで用意しました!! ここにサインください!!」
「ハンコもください」
(落乱42巻207頁 小松田秀作/清八)
〇花押
文章の作成者が本人である事を保障するための略式のサイン。
中国の唐代中期(7世紀頃)に発生し、日本では平安時代中期(10世紀前半頃)から、
使用され始めた。書判(かきはん)、花書
(かしょ)、押字(おうじ)ともいう。
花押の押された文章は「判物」と呼ぶ。
武家においては、文章の真偽を判定する際に、花押の照合が重視された。
偽造防止のために花押を変更したり、同じ花押でも、年代ごとに微妙に仕様が変わったりするため、
文章の真偽以外にも、文章が作成された年代が花押によって大体分かる場合もある。
江戸時代までは盛んに用いられたが、明治6年、実印のない証書は裁判上の証拠とならないとする旨が布達されたため、公文書・私人間での花押の使用は事実上廃止となった。しかし、現代においても明治以来の慣習として、政府閣議における官僚署名は花押で行われる。
花押の書体には、以下の分類がある。
◇草名体
草書体を極端に形様化したも。
花押の原型で、平安時代は草名体が主流であったが中世(鎌倉時代)以降減少した。
◇二合体
名前2字を組み合わせたもの。
源頼朝の花押は、頼の束と朝の月を合わせた「束月」(実際には存在しない字)
◇一字体
名前・理想などの一文字を採用したもの。戦国時代に流行した。
織田信長の「麟(リン)」、豊臣秀吉の「悉(シツ)」が有名。
麟:麒麟から。麒麟→天下泰平の世にしか姿を見せない古代中国の想像上の動物→天下平定
悉:ことごとく。秀(「シ」ュウ)と吉(キ「ツ」)で悉(シツ)。この手法を半切りという。


◇別用体
動物などを図案化したもの。伊達政宗の鶺鴒(せきれい)の花押が有名。
◇明朝体
上下2つの水平線の間に縦線、横線、点を配置したもの。
徳川家康が使用したことから、江戸時代前期に急速に広まった。徳川判。徳川様(とくがわよう)とも言う。
〇印章

朱色の印を朱印、黒色のものを黒印とも。
公文書に押印するもので、名前、または信仰・理想・願望・吉祥文言(もんごん/おめでたい語句)等を印に刻んだもの。特に東国の武将が好んで用いた。忍術書、万川集海では、「始計六ヵ条」において「兼ねて諸方の城主の印を偽写し置くべき事」と述べ、今川氏親、豊臣秀吉、織田信長の印を例として挙げている。
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